ニシエヒガシエ
詩から詞へ
朝日新聞夕刊より
桜井 和寿
片一方は天使 もう一方は悪魔で
分裂しそうなんだ 抑鬱剤をちょうだい
暗い未来を防ぐんだ
永い迷宮みたいな 青春
張り付けの刑になったって
明日に向って生きてくんだって
ただじゃ転びやしませんぜって
非常事態ってやつも歓迎です
ニシエヒガシエ
(1998年、抜粋)
天沢 退二郎
詩の言葉は多義性を本質としている。歌詞も同じことだ。
MR.CHILDRENこの歌、詞はむしろ多義性の希薄なところを、メロディーやテンポ、歌唱の多様さで補っているのだが、題名にもなっているリフレインの「ニシエヒガシエ」という一行は、多義性が集中していておもしろい。
北や南でも“東へ西へ”でもなくて“ニシエヒガシエ”——
方角を表す語を用いながら、方向性は逆に消去されている。これは「永い迷宮みたいな」今の青春の、いわば横レベルでの多義性的なゆらぎに照応しているのだ。
(ちなみに宮沢賢治に「西も東も」で始まる詩がある)(詩人)
※歌詩が一部違うところがありますが、これは新聞に載っていた通りになっています。
「歌詞」じゃなくて、「歌詩」って書いて欲しいなぁ~(笑)